ある卵巣がん患者配偶者の記録

2015年1月から9月までの戦いの日々

卵巣ガンについて総括

さて今回の件を通じて、いろいろなことを学んできたわけですが、ひとまず卵巣ガンという病気について整理しておきます。

10数冊の本とネット上の情報、論文、ブログなどを読み漁った範囲では、卵巣ガンと診断をうけた患者がまず最初に読むべきものはこちら。

心配しないでいいですよ再発・転移卵巣がん

心配しないでいいですよ再発・転移卵巣がん

再発・転移と表題にはあるものの、初期と診断を受けた人や、良性の病変があって経過観察になっている人こそ知っておくべき内容のほうが多いです。

この本は、有名ながん研有明病院の副院長兼婦人科部長である瀧澤医師の口述筆記によるもので、臨床的な視点から卵巣ガンにまつわるあらゆることがわかりやすく書かれているので、まずは絶対に読むべき一冊として太鼓判を押せます。医師の説明をきいてもよくわからなかった疑問が、ほとんど全てこの本で解消しました。

私の場合、手術が終わってから入手したのですが、それまでに頑張って自力で調べたり推論したりしていたことの答えのほとんどがここに書いてあり、もっと早く手に入れていれば。。。と思いました。

次に絶対におさえておきたいのが、日本婦人科腫瘍学会の治療ガイドライン。婦人科腫瘍の専門医は、原則としてこのガイドラインに従った治療を行うので、どのような場合にどうなるのか、という医師の視点を知っておくのは重要です。卵巣がんだけでなく、子宮頸がんや子宮体がんについても扱っています。

本来は医者向けにかかれたものなので、最初は難しそうに思えますが、慣れてくるとむしろ情報量の少なさと治療方針が決まるアルゴリズムの単純さのほうが気になってきて、参考文献の原典をあたるようになるでしょう。それら文献の信用度もレベル表記されており、リンク集としても役立ちます。

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たとえば、妻のケースで気になったのは、リンパ節を郭清する意義についてです。

闘病ブログなどを見ていると、医師のすすめるままに実行している人の話しかでてこず、「すすめられたが断った」というような事例はほぼ皆無でした。AskDoctorsという医療Q&Aサイトに加入して調べてみても、やはり出てきません。そこで、標準ガイドラインにあたってみたところ、そこに書かれていたのは

後腹膜リンパ節(骨盤・傍大動脈)郭清(生検)の範囲は骨盤リンパ節と左腎静脈の高さまでの傍大動脈リンパ節である

1) 正確な進行期を知るうえで、その診断的意義は確立されている。

2) 治療的な意義は必ずしも確立されていない。

ということでした。ここで、「治療的な意義は必ずしも確立されていない」と書かれていることには、正直驚きました。事実、アメリカではほとんどリンパ節の郭清は行わないのが標準となってきているようです。つまり、同じデータを見ていても、立場が異なる医師と患者では違う結論を導き出しうる、ということです。進行期を正確に知ることを主目的としてリンパ節を全部とる、というのは、率直にいって患者視点ではなく医療データ収集視点だと感じたし、やりたくないと感じました。

私たちの場合、がんという病気について調べれば調べるほど、必要以上に怖がる必要はないものだ、と考えるに至りました。

あらゆる病気には、原因と結果があります。とくにガンのような生活習慣病の場合にはなおさらです。

妻の場合には、10年以上前から子宮内膜症による卵巣嚢腫がありました。当時は子宮筋腫だと診断されていたのですが、今回のことから振り返るに、これはおそらく誤診だったのでしょう。卵巣嚢腫にせよ子宮筋腫にせよ、大きさが3cm程度にとどまっているうちは良性と考えられているので、いずれにしても経過観察となっていたはずです。

しかし最近になって、子宮内膜症から発生した卵巣チョコレート嚢腫を長年放置しておくと、血液に含まれる鉄分が蓄積してフリーラジカルが周辺の細胞の遺伝子に継続的なストレスを与え続けるため、5-10%の確率でガン化することがわかってきました。妻の場合は、まさにこのケースでしょう。そして10年間、大きくなることもなかった嚢腫が、1年前にアメリカの居酒屋で仕事をはじめてからの不規則な生活(14時から22時まで)と偏った食事(夜遅くに帰ってきてからあまり食べたくないのでヨーグルトと炭酸飲料ばかりだった)で免疫力が低下し、ガンが進行してしまったのでしょう。さらに、冷え性体質なのに暑い夏だからといって冷房の効いた部屋に薄着でいたのも良くなかったと思います。アイスクリームもよく食べていたようです。

こうして改めてみると、ガンのリスクを高めるといわれているあらゆる悪い生活習慣がこの期間、集中していました。

逆に言えば、これからはこうした点に気をつけていけば、再発は防げる可能性が高いと思っています。幸い今回のケースは1期でもあり、術後に視認可能な残存腫瘍は残っていないので、あるとすれば微小ガン細胞が体内のどこかにある程度でしょう。しかし、ガン細胞というのはいわゆる健常者でも一日あたり数千個ぐらいは生まれていて、それをp53遺伝子などの働きで抑制しているわけですから、もはや健常者との違いはないともいえます。

今の検査技術で画像的にみつけられるガンといえば5mm程度が検出限界ですが、このサイズになるまでにはすでに(細胞種にもよりますが)5-10年ぐらいの時間がかかっています。つまり、現在の医療技術ではみつけられていないだけの「ガン予備軍」状態の人は、実際問題として相当いるはずです。日本で全人口の1/2がガンになり1/3がガンで亡くなると言われている現在、40歳ぐらいになれば本気で全身検査すればどこかに何らかのガンやガンの前駆症状が見つかる可能性は誰にでもあるわけです。

もちろん、ガン細胞がこんなに大きく(腫瘍径1cmで細胞10億個、アポトーシスなしと仮定するとダブリング30回分相当)なるまで免疫をくぐり抜けたということは、免疫系に非自己(つまり敵)として認識されない状況が長く続いたということでもあるのでしょうし、発病したという実績がある以上、再発のリスクは明らかに健常者よりも高いでしょう。しかし、人生において狼狽しているときや恐怖を感じているときに行った意思決定はたいてい後悔することになるというのも経験則として学んできているので、必要以上におそれることなく、冷静な見極めをしていくことが大切だと考えます。

そんなわけで、今後はガンを「正しく恐れる」ことを主軸に、将来の人生設計を考えていこうと思っています。

まず、診断を受けた1月5日以降、うちの両親含めて家族全員で、食生活を大きく見直しました。主に参考にしたのは済陽式食事療法で、毎朝スロージューサーで絞った人参やリンゴを中心とした新鮮な野菜ジュースを飲む、白米をやめて玄米や雑穀米に切り替える(実をいうと私たち夫婦はすでに以前から玄米食でしたが)、牛や豚などの四足の肉を食べないで魚と鶏のみ少量たべる、塩分を控えめにする、お菓子や清涼飲料水などは一切断つ、有機野菜を中心として農薬や添加物などの化学物質の摂取を避ける、もちろん加工食品も避ける、ごま油・オリーブオイル・ココナッツオイル以外の油を使わない、乳製品は少量のヨーグルトのみ、サプリメントエビオス錠。。。など、実行しやすく続けられるものを試行錯誤しています。

そして何よりも、全体的に食べる絶対量を減らす。夕食のあと寝るまで何も口にしない。これらは、ガン対策というだけでなく、誰にとっても健康によいことなので、一緒に続けられます。事実、この食生活になってから、父親が長年悩まされ慢性化していた逆流性食道炎が完治したり、体重が絞れたり、明らかに良い結果がでてきています。

また、時間をみつけては軽い体操をしたり、近所の山を1時間ぐらいかけて登ったり、まだ術後の傷があるので可能な範囲で運動をするようにしています。

そして、冷え性対策には鍼灸院に通いはじめたり、メディキュットの弾性ストッキングを履くようにして血行の改善に努めています。

これらの努力の総合で、便秘もなおったり、体温も高まったりと、明らかに妻がこれまでになく健康体になってきているのがわかります。また、予想外の良い副作用というべきか、患側卵巣をとったことで子宮内膜症もなおってしまったらしく、20年来悩まされていた生理痛がほとんどなくなったようです。あんなに大きな手術をした後なのに、ほとんど予定通りに生理がきて、一個になってしまった卵巣が二個分がんばってるんだと思うと、不思議な感じがします。

アメリカに戻ってからも同じように健康的な生活を継続することで、二度とガンが戻ってこないような体質を作り上げていきたいと思います。

以下、参考までに、個人的に読んでよかった本をリストしておきます。

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