ある卵巣がん患者配偶者の記録

2015年1月から9月までの戦いの日々

術後1日目

日本での手術直後には気道確保のために入れたチューブが苦しそうだったが、ここではチューブなし。酸素マスクも口全体をカバーするタイプではなく鼻に細い管をひっかけるだけの、いわゆる鼻カヌラ。ただ、呼吸が弱くなったことを検知すると、センサーがけたたましい警告音を鳴らす。

痛み止めは、硬膜外麻酔はなく、そのかわりに日本で未認可のオピオイド(麻薬系の強い痛み止め)Hydromorphoneが点滴を経由して持続投与されていて、痛みが強いときには患者が自分でボタンを押せばとんぷくとして追加で流すことができる。ただ、押しても有効なのは10分に1回までで、それより短い間隔で押しても出てこない。

術後の口の乾き対策も大きく異なり、うがいをして水をのみこまずに吐き出す日本のやり方とは違って、Ice Chips(氷の小さい円筒状の塊)を舐めて口の乾きを潤す。

術後の管理として特徴的なのは、Incentive Spirometerの存在。上の写真で、上のほうに写っている目盛りのついた器具のことだ。

ベッド上で端座位になってマウスピース端を口に含み、ゆっくり深く吸い込んでいくと、ピストンが上がっていき、吐くと下がっていく。これがピーク時に1500mlのところまで行くような肺活量を目標にする。

昨日の術後は500mlまで行っていたのが、今日になると250mlまで低下。酸素マスクをしていると肺活量が落ちて、肺炎になりやすくなるらしい。

いずれにせよ、日本での経験とくらべて、ずいぶんと術後の負担が軽いように感じる。

10amにはベッドから起き上がって歯磨きもできた。

左が、術後の最初に投与されていた点滴。普通の電解質補液っぽい。右が、今日の分。ブドウ糖が追加されている。

血栓予防に、足には弾性ストッキングを履いた上からレッグマッサージのポンプ。

入院中の病衣は、前から着て後ろで結ぶタイプのガウン。

ただ、膀胱に違和感がかなりあるらしく、何度も導尿チューブの状態を確認してといってくる。

腹帯は、日本のものにくらべてしっかりしたサポート力のある素材。DJO Global Abdominal Binderという製品。

日本から一緒に持ってきたお守りを吊る。

一階のカフェテリアへ朝食を食べに行ってみると、野菜やトッピングを自分で選んで持って行くとオムレツをその場で焼いてくれたり、なかなか悪くない。コーヒーとベーグル、クリームチーズを合わせて$5いかないぐらい。良心的な価格設定だと思う。

夜、閉まるのが8pmとやや早いが、深夜にもオープンする。

たまたま、同フロアで医療機器フェアのようなものをやっていて、da Vinci Surgical Systemを展示してある。実物を見たのは初めてだった。ソフトウェア・エンジニアとして、テクノロジーで手術を支援するというアイデアには惹かれるものを感じる。

夕方近くになって、スッキリしたアップルジュースを常備しておきたい、というので、病院の隣のTargetへ歩いて買いに行く。隣、といっても広大な敷地の病院の、8車線ある道路を挟んだ向かいの巨大なショッピングモールにあるので、15分ぐらいかかる。

ついでに、私が病室で付き添いをするのに靴よりもサンダルのほうが都合が良いので、$20ぐらいのサンダルを買ってくる。